こんにちは、設計担当の石堂です。
朝夕肌寒くなってきた今日この頃、みなさまどうお過ごしですか?
朝寒いと感じても、日中は暑かったりするので、今日着る服を選ぶのも悩ましいですよね。
ただ、そんな季節もすぐに過ぎ去り、寒い冬がやってきます。
自転車通勤の私もつらい季節の到来におびえています。
そんな冬に、外の空気で冷えた体を温かく迎えるお家は理想的ですよね。
しかし、現実的に冬場はお家の中でも「寒い」と感じてしまう方がほとんどです…
そこで今回は快適な室内環境についてお話したいと思います。
温熱環境が整うと健康状態も向上する
いきりですが、住宅内でおきる事故死についてのお話です。
住宅内の不慮の事故で亡くなられる人は年間で約13,000人にのぼります。
年間で交通事故でなくなられる方(5000人)と比べると約2.6倍になります。
また、統計上は12~2月の冬場の死亡率は約9%で、7月~9月の約7%を上回ります。
それだけ、冬場のヒートショックで亡くなられる方が増えていると読み取れます。
しかも、死亡事故以外の住宅内の事故も冬場において増加傾向が見られます。
このことから、住宅の冬場の寒さ対策を行うことで、事故、死亡の防止効果が期待できます。
ここで、断熱性能と健康との関係性について触れたいと思います。
下のグラフは住宅の断熱のグレード上げたときに、
各症状が改善したかどうかを調査した結果のグラフです。
G3、G4、G5はお家の断熱性能の等級を表したもので、
数字が大きくなると断熱性能も大きくなります。
グラフから読み取れるように、断熱性能を上げると、「冷え」に対してだけでなく、
さまざまな健康被害の症状に対しても改善が見られます。
(ちなみにG3は平成4年に定められた省エネ基準、G4が平成11年に改訂された省エネ基準、
G5は温暖地において北海道仕様の断熱性能を持つ住宅(ZEH基準を超える仕様))
もちろん建物自体の断熱性能が上がれば、異なる室の間での温度差も小さくなり、
ヒートショックによる健康被害も抑制できます。
また、室内の環境についてですが、イギリスにおいては健康的な室温は21.0℃とされていますし、
アメリカのニューヨーク州の賃貸住宅では最低でも12.8℃以上の維持が法律で定められているように、
国・地域によっては、法律によって室内環境が守られています。
それに対して日本では、室内でも10℃以下の室温で冬場の夜を過ごし、
朝を迎えることが一般的だといわれています。
寒さに対して「ガマン」してしまうのです。
これらのことから、健康を支えるうえで
断熱性能の向上による室内温度の上昇が、極めて重要なポイントであるといえます。
既存の家の断熱はどうやればいいのか
では、断熱について実際何をすればいいのでしょうか。
リフォームの仕事をしていても、「冬場、家の中が寒い」という声はよく聞きます。
昔の法律では、昭和55年に旧省エネ基準がさだめられ、
住宅に50㎜以上の断熱材を施工することが義務付けられました。
ただし、ほとんどの家がその断熱材の効果を充分に発揮できていません。
断熱材を施工しても、日本の柱、梁で構成される軸組構法の建物では、
壁・天井の内部や、その取り合いに隙間ができ、
床下や天井裏など外気に触れる部分から流入する空気が壁体内にも流れ込み、お家全体を冷やしてしまいます。
※下の図参照
ここで大事なのは床下や天井裏から躯体内への空気の流入を止める必要があるということです。
今の新築の住宅では様々な方法で「気流止め」が施工され、躯体内の空気の流れを遮っています。
大規模なリフォーム工事を行う場合は、断熱材自体の施工、改修も容易なのですが、
コストを抑えるためには、既存の断熱材が充分に効果を発揮できるように、「気流止め」を設置することも効果的です。
また、熱損失の大きい開口部廻りの断熱、たとえばサッシを入れ替えたり、内窓を設置したりすることで、
よりいっそう断熱性能を向上させることができます。
快適な室内環境
室内温度と健康の関係性、断熱の重要性についてお伝えしてきましたが、
実は室温を適切な温度に保っても快適とはなりません。
快適な空間を作り出すうえで重要な要素は6つあります。
1.室温・・・温度計で示される温度
2.相対湿度・・・空気中の水分量。温度が同じでも湿度が違うと不快に感じることがある。
3.放射温度・・・壁、天井、床、家具などから伝わる熱。輻射熱。
4.気流・・・空気の動き。温度が同じでも気流が強いほど寒く感じる。
5.活動量・・・身体から発生する熱量の事。「作業の内容」ごとに指標で決めてある。
6.着衣量・・・着衣の暑さや面積によって「熱抵抗」がかわる。
おおざっぱに説明すると、上記のような要素が絡まって快適な温熱環境が生まれます。
ここで室温以外で健康・快適に重要なのが湿度です。
室内の湿気は40%~60%の間が適切とされています。
もう少し正確に言うと、50%以上、60%以下が最適です。
湿度が60%を超え高湿度になると結露が発生し、「カビ」「ダニ」が繁殖しやすくなります。
「カビ」「ダニ」の繁殖は室内空気を汚染し健康を害する原因となるので、
発生を抑制する上で湿度を60%以下に抑える必要があります。
また、湿度50%以上をおすすめする理由としては、
絶対湿度(空気中の水蒸気の質量:空気1kg中の水蒸気量 g/kg)が上がるにつれ
インフルエンザなどのウイルスの生存率が減少するためです。
現実的な加湿状況でみると「室温20℃ 湿度50%」程度が最適になります。
冬場は特に空気が乾燥していますので、室内の空気を加湿する必要がありますが、
湿気は調理、洗濯、暖房器具、人体など様々なものから常に発生していますので、
カビの生育に適切な条件は比較的整いやすくなります。
加湿器による過剰な加湿や、洗濯物の室内干し、換気ができてない状態での調理、観葉植物や水槽の設置などが室内の湿度を高め、
結露の原因や、カビの繁殖の原因になっていることがままあります。
特に断熱性能が低い建物の場合は、そういった状態が促進されます。
それを防ぐためにも、建物の躯体や、結露しやすい開口部の断熱性能を向上させるとともに、
温湿度計を設置し、空調・加湿器・換気計画により最適な状態に温湿度を保つことが、
快適で健康的な室内環境を整えるうえで重要になってきます。
平均寿命と健康寿命
最後に平均寿命と健康寿命についてです。
日本の平均寿命は2017年、男性で80歳、女性で87歳を記録して過去最長を更新しました。
統計を取り始めたころ(1947年頃)に比べると30年も寿命が延びているそうです。
しかし、健康的な日常生活を営める期間である「平均健康寿命」は、
男性が約72歳、女性が約75歳と平均寿命に比べて約10年短くなっています。
これは、多くの日本人が「健康寿命」をすぎて「寿命」が来るまでの10年間を、
健康でない状態で過ごしていることを意味しています。
たとえば脳卒中の場合、初回発症後の平均余命は7.5年だそうです。
7~8年を入院、通院、リハビリで過ごすことになってしまいます。
せっかく寿命が延びてもこれでは意味がありません。
また、その期間にかかる医療費もかなりのもので、自己負担だけでも数百万円になります。
断熱性能の向上や、室内環境の整備など、
住宅の性能をあげることは「健康寿命」を延ばすことにつながります。
みなさまが永く健康であるために、人生の大半を過ごすお家をより快適で健康的にできるようなご提案ができればな、
と感じた秋の日でした。
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