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お客様から聞いた危険なリフォーム提案
今回は、お客様から聞いた危険なリフォーム提案についてお伝えします。
今回のお客様のご相談は、よくあるリフォームの1つでした。冬には寒いタイル張りの浴室を、あったかいシステムバスにリフォームしたいというものでした。
現状の浴室のサイズでは、1216サイズのシステムバスを入れることができますが、もう少し広い浴室にしたいというご要望がありました。ただ、予算にも限りがあるという内容でした。
1216サイズとは、1200ミリ×1600ミリのサイズです。もう少し大きいサイズにすると、1316サイズ(1300ミリ×1600ミリ)があります。そのサイズのシステムバスを入れたいとのご要望がありました。
しかし1316サイズにするためには、浴室近辺にある柱を一度撤去しなければならないという問題がありました。それができるのかできないのか、図を見ながら解説していきたいと思います。
私がお客様からご要望をお伺いする前に、既に他社のリフォーム会社にご相談されていました。その担当者の方は、浴室と洗面室の間にある柱を取り除けば、1316サイズのお風呂を入れられると簡単にお客様に伝えていたそうです。その後に私が訪問しました。
私もよく、補強をしっかり行った上で不要な柱を撤去してお風呂を広くする提案をします。しかし今回は、この柱は撤去しない方がいいとお伝えしました。
この柱は部屋の内部の柱となっていて、確認は必要ですが、普段は補強した上で撤去できることが多い柱です。しかし、今回は違いました。この柱は2階の外壁ライン上に位置している柱だったのです。屋根の小屋束も支えていたり、この柱ともう1つの柱で梁を支えていたりするような、重要な柱でした。
確認のため、外から構造を確認したり、図面を見せてもらいました。その結果、一見抜いてもよさそうな柱ですが、この柱は重要な柱であることがわかりました。
梁の幅や高さは、この柱がある前提で計算されています。この柱を撤去すると、梁の高さが設計時の計算より低くなり、2階の荷重を支えきれなくなる恐れがあります。極端な例ですが、梁に2階の荷重がかかり、梁がたわんでしまう可能性もあります。
実際にこの柱を撤去するとなると、なかなか技術が必要になると思います。2階の荷重を支える強度が必要なため、撤去するには今ある梁の下に休メというものを追加して、今ある梁と連結させて補強する必要があります。
しかし、天井や壁にも干渉するため、天井を大きく解体することになります。さらに、屋根も支えている柱であるため、補強にも高度な技術が必要です。
先にお客様が相談されたリフォーム担当者の方は、柱を撤去すれば大きなお風呂が設置できるという内容だけで、その後の補強や家全体への影響は説明していなかったそうです。ですから、お客様も柱を撤去すれば大きなお風呂が設置できると考えていました。
私はお客様に「ちょっと待ってください」と伝え、この柱が家全体に影響する重要なものであることを説明しました。また、お風呂を10センチ大きくすることと、そのために柱を撤去することを比べると、家のためを考えると柱を残して現在のお風呂サイズでリフォームする方がよりよい選択だとご説明しました。
お客様は、「お風呂のために家全体の寿命を縮めることはしたくない」と理解してくださりました。私の方を信頼してくださり、そのまま工事を進めさせていただくことになりました。
お風呂を少しでも大きくし、足を伸ばしたいというお気持ちには、私もすごくわかります。しかし、お家の耐震性や安全面に勝るものはないと思います。私は今後も、安全第一のご提案をさせていただきたいと思います。
残念ながら最近のリフォーム業界では、今回のお話のように、安易に柱を撤去して広くできるという提案をされる方が多いと聞きます。今回の事例を参考にしていただいて、完全・快適なリフォームをされることを願っております。ぜひ参考にしてみてください。